交通事故・後遺障害等級14級9号の認定に対する異議申し立てのポイント
2020/11/09
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交通事故で負傷し,治療を終えても,患部の痛みやしびれ,だるさ等の神経症状が残存する場合,自賠責保険において後遺障害等級が認定される場合があります。患部の痛み等に対する後遺障害は,多くの場合,次の3つのいずれかに分けられます。
・12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
・14級9号 局部に神経症状を残すもの
・非該当
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このうち,12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)は,「他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられる」場合とされ,痛み等の症状について医学的な証明ができる場合に認定されます。他方で,14級9号(局部に神経症状を残すもの)は「他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられないけれども,治療状況や症状経過等からすれば,残存する症状は将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられる」場合とされ,痛み等の症状について医学的に一応の説明がつく場合に認定されることが多いようです。
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では,12級13号と14級9号を分けるポイントはどこにあるのか,具体的な事例にそって検討します。駐車場内を歩行中に車に接触し,転倒後,強く両手を地面についたという交通事故が発生しました。事故当初,被害者に肩の痛みはありませんでしたが,2週間程度経過後に肩の痛みが強まり,医療機関を再受診し,肩の治療とリハビリを継続しました。
治療終了後も肩に痛みが残存するため,自賠責保険の後遺障害認定を受けたところ,肩の画像上,肩に変性所見は認められるものの,外傷性の異常所見や明らかな腱板断裂所見は認められず,他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられないとして14級9号の認定がなされました。
被害者の診断書や後遺障害診断書には,腱板断裂の傷病名が記載されていましたので,14級9号の認定は不当であるとして,被害者は当事務所に相談されました。
そこで,弁護士において,外傷性の腱板損傷を医学的に証明することを目指し,被害者のカルテを取り付け,検討しました。カルテの記載から,主治医が画像上の所見は変性ではなく外傷性の腱板損傷と捉えているものと読み取り,主治医に対し,その理由等を照会しました。この照会に対し,初期症状に効果的であるとされる関節内注射で改善したことや,関節に外力が加わることによっても起こるとされる水腫(関節内の関節液の増加)が認められることから,外傷後早期の所見として矛盾しないとの回答を得て,自賠責保険に異議申し立てを行いました。
その結果,自賠責保険は,MRI画像上,水腫があること,また,腱板の変性ではなく腱板断裂があることを認め,前回の認定を変更し,他覚的に神経系統の障害が証明されるものとして12級13号を認定しました。
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以上のように,自賠責保険の後遺障害等級認定では,画像上の所見が認められる場合,それが外傷性の所見として評価できるのか,経年性の「変性」にとどまるのかが,12級13号と14級9号の認定に分かれる重要なポイントの一つといえます。
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自賠責保険の後遺障害認定について異議申し立てを行う場合,前回認定で提出された資料のみでは,なかなか結論は覆りません。前回認定の結論を覆すためには,前回認定で誤っている点や不当な点を医学的な知見で的確に指摘することが必要ですので,異議申し立てをご検討の際は,これに対応できる弁護士に相談されることをお勧めします。