圓尾一恵の社労士コラムVol.2「法律・会計に係る士業が、新たに社会保険の強制適用事業所になります」
2022/10/20
「年金制度の機能強化のための国民年金等の一部を改正する法」の施行に伴い、適用拡大の取り組みとして、令和4年10月1日より、これまで適用業種以外であった個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している該当の士業は、新たに厚生年金保険・健康保険の強制適用事業所となります。
1.新たに適用の対象となる該当の士業
これまでは、法律・会計に係る業務を行う以下の士業は、常時5人以上の従業員を雇用していても、社会保険の加入は強制ではありませんでしたが、この度の適用拡大により、個人事業所の適用要件の例外ではなくなります。
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2.強制適用事業所と任意適用事業所
(1)強制適用事業所とは
事業主や個人の意思、会社の規模・業種、従業員の人数に関係なく、社会保険への加入が義務づけられている全ての事業所をいいます。
①株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)
②常時5人以上の従業員を雇用している個人の事業所(農林漁業、サービス業などの場合を除く)
製造業・建設業・物品販売業(卸・小売)・運送業・出版業・金融、保険・医療・福祉・ソフト開発通信、報道の業務等
③常時5人以上の従業員を雇用している個人の事業所のうち法律・会計に係る業務を行う士業
(令和4年10月1日より新たに適用となった上記1の業種)
(2)任意適用事業所とは
常時5人未満の従業員を雇用している個人の事業所です。
上記(1)の強制適用事業所以外で、従業員の半数以上が同意をし、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けて、適用事業所となった事業所。(但し、同意しなかった方も加入することになります)
(3)「常時5人以上(未満)の従業員」に含まれる方とは
個人の事業所において、強制適用要件の基準となる従業員の方です。
①正社員
②パート・アルバイト等のうち、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である方
3.社会保険の加入手続について
(1)加入手続の対象(被保険者)となる方
①正社員
②パート・アルバイト等のうち、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である方
※「常時5人以上の従業員」に含まれる方と同じです
(2)書類と届出先
①必要書類
事業所の「新規適用届」と被保険者となる従業員の「被保険者資格取得届」、場合により「被扶養者異動届」
※「被扶養者移動届」は国民年金第3号被保険者に関する届出書類です。
②届出先
日本年金機構(事業所の所在値を管轄する事務センター等)
(3)加入手続の種類まとめ
厚生年金保険または健康保険に既に任意で加入している場合など、現在の社会保険の加入状況により、それぞれ、以下のような手続が必要になります
①厚生年金保険及び健康保険に任意で加入している
届出は不要です
②厚生年金保険のみ任意で加入している
健康保険について、事業所の「新規適用届」と従業員の「被保険者資格取得届」(または「適用除外承認申請書」)
③健康保険のみ任意で加入している場合
厚生年金保険について、事業所の「新規適用届」と従業員の「被保険者資格取得届」
④厚生年金保険及び健康保険のいずれも加入していない
厚生年金保険と健康保険について、事業所の「新規適用届」と従業員の「被保険者資格取得届」
☆詳しくは厚生労働省HPをご確認ください
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/20211118.files/sigyou.pdf
最後に
今回対象となる士業は、個人の事業所が多い業種といえますが、これまでは「常時5人以上の従業員を雇用」していても、社会保険の加入について、強制ではありませんでした。
そのため、任意適用事業所である場合を除いては、フルタイムで採用された方であっても、社会保険の適用がないまま長期間、勤務される方も多かったと想像できます。
こちらの適用拡大は、短時間労働者の方の適用拡大(VOL.1)の場合と異なり、これまでも働き方はフルタイムであったのに、お勤め先の業種が、個人事業の適用要件の例外とされていた士業であることから、社会保険に加入できていなかった方が対象になります。(引き続き、農林漁業、サービス業などは例外)
これらの士業の個人事業所は、まだまだ事業主と労働者が1対1の職場も少なくありません。今回の「常時5人以上の従業員を雇用~」という条件に、現在は当てはまらなかったとしても、任意適用事業所として社会保険に加入することは可能です。労使で話し合いをして、社会保険の加入をご検討されるのもよろしいかと思います。