取締役会について
2018/10/04
1.意義
取締役会とは、取締役全員で構成し(362条1項)、その会議により業務執行に関する意思決定をするとともに、取締役の職務執行を監督する機関です。
2.権限
取締役会は、次に掲げる職務を行うこととされています(362条2項)。
- ① 会社の業務執行の決定
- ② 取締役の職務の執行の監督
- ③ 代表取締役の選定・解職
3.取締役に委任できない重要な業務執行の決定(362条4項)
取締役会は、「次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定」を取締役に委任することができません(362条4項)。
- ① 重要な財産の処分・譲受け
- ② 多額の借財
- ③ 支配人その他の重要な使用人の選任・解任
- ④ 支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止
- ⑤ 社債の募集
- ⑥ 取締役の職務執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制等の整備
- ⑦ 定款の規定に基づく取締役等の責任の一部免除
なお、大会社においては、⑥を必ず決定しなければなりません(362条5項)。
また、⑥の具体的な内容は、以下のとおり定められています(会社法施行規則100条)。
-
(ア)
- ⅰ)取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
- ⅱ)損失の危険の管理に関する規定その他の体制
- ⅲ)取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
- ⅳ)使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
- ⅴ)当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
-
(イ)
監査役設置会社以外の会社では、(ア)の体制には、取締役が株主に報告すべき事項の報告をするための体制を含みます。
-
(ウ)
監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社を含みます。)では、さらに以下の体制を含みます。
- ⅰ)監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合におけるその使用人に関する事項
- ⅱ)ⅰ)の使用人の取締役からの独立性に関する事項
- ⅲ)取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制
- ⅳ)その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
4.業務執行
取締役会設置会社の業務を執行するのは、代表取締役及び選定業務執行取締役です(363条1項)。これらの取締役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(同条2項)。
5.監督
取締役会は、取締役の職務執行を監督することとされています(362条2項2号)。
この監督機能に資するために、前記のとおり、代表取締役及び選定業務執行取締役は、取締役会に職務の執行の状況を報告しなければなりません(363条2項)。
その他、監査役も取締役会への出席義務があり(383条)、取締役が不正の行為をしているなどの事実があると認めるときは、遅滞なく、取締役会に報告する義務を負っています(382条)。
6.招集
取締役会を招集する者は、取締役会の1週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、取締役及び監査役に対して通知を行うことになっています(368条1項)。ただし、取締役及び監査役の全員の同意があるときは、招集手続を省略することができます(同2項)。
7.決議
- ① 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行います(369条1項)。
- ② 取締役会設置会社では、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役会設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます。
- ③ 取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(369条2項)。
-
④ 取締役会決議の手続または内容の瑕疵
株主総会の取消し・無効・不存在の訴えのような制度は設けられておらず、一般原則に従い、無効と解されます。(最三小判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁)
「取締役会の開催にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠くことにより、その招集手続きに瑕疵があるときは、特段の事情のないかぎり、右瑕疵のある招集手続きに基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが、この場合においても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、右の瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になると解するのが相当である」
8.特別取締役による取締役会決議
取締役会は、迅速な意思決定を可能にするため、重要な財産の処分・譲受け(362条4項1号)、及び多額の借財(同条2号)についての取締役会の決議については、あらかじめ選定した3人以上の特別取締役のうち、議決に加わることができるものの過半数(これを上回る割合を取締役会で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を取締役会で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行うことができる旨を定めることができます(373条1項)。
特別取締役を選定するには、以下の要件を満たす必要があります。
- ⅰ)取締役が6人以上であること
- ⅱ)取締役の1人以上が社外取締役(2条15号に定義規定あり)であること
9.議事録
取締役会設置会社は、取締役会の日から10年間、議事録等をその本店に備え置かなければなりません(371条)。
コラム一覧
- 弁護士×中小企業診断士の視点:事業承継を弁護士に依頼するメリットを考える
- 弁護士×中小企業診断士の視点:コロナ禍における事業承継・経営紛争⑥
- 弁護士×中小企業診断士の視点:コロナ禍における事業承継・経営紛争⑤
- 弁護士×中小企業診断士の視点:コロナ禍における事業承継・経営紛争④
- 弁護士×中小企業診断士の視点:非上場株式の買取業者について
- 弁護士×中小企業診断士の視点:本当に公平?事業承継で利用される無議決権株式の光と影
- 弁護士×中小企業診断士の視点:利用できていますか?事業承継の際の様々な支援制度③~経営者保証ガイドライン~
- 弁護士×中小企業診断士の視点:利用できていますか?事業承継の際の様々な支援制度②~低利融資制度~
- 弁護士×中小企業診断士の視点:利用できていますか?事業承継の際の様々な支援制度①~事業承継・引継ぎ補助金~
- 弁護士×中小企業診断士の視点:コロナ禍における事業承継・経営紛争③